2025年04月30日
職人の技が消えていくということ
こんにちは 新城建造の松浦恵子です。
昨日、私用で立ち寄った呉服屋さん。いつものことながら、素敵な反物たちにため息まじり。
店主も「着物愛」が半端ないので、一反の反物の、気の遠くなるような制作工程から、
何十年も・・ともすれば何世代にもわたっての技術の高さや、拘りのすごさなどについて、
興味深く、時に笑いも交え話してくれました。
そして着物業界は「染めや織り、糸づくりや絵付け……作業工程など全部が細かく分業されているから、
ひとつでも抜けると反物自体が成り立たなくなり、それが(人材不足に)拍車をかけている」と。
後継者不足はどの業界も深刻ですね。
たかが一反の反物だけれど、レクチャーの後というのも相まって、
その存在感や放たれるオーラに圧倒され、そしてこのような文化や技術を持っていることに誇りすら感じました。
かたや、今どきの着物はプリンターで がぁーと印刷するものも多く
これが良い悪いは別にして、これが時代の流れでしょうか?
うすうす感づいてはいたものの、どこか切ない気持ちになりました。

そんな話をしながら、自然と父のことを思い出しました。
父は板金職人で、晩年は「現代の名工」にも選んで頂き、
仕事の傍ら、趣味としてずっと金属板を加工し壺などを作っていました。
元来の職人気質で、趣味が高じて「日本伝統工藝展」などにも何回か入選したこともあります。
わがままで頑固な父に反発して、
当時はたいそうな展覧会に入選したと聞いても「ふん・・・!」くらいな態度で接していたけれど、
今ではちょっと反省と後悔しています。

反物も、金工も、どれも一朝一夕では生まれない“手の技”です。
それが静かに、この世から少しずつ姿を消していく。
それを見送ることしかできない私たちに、何ができるのだろうか・・・。
「機会があったらもっと着物を着よう!」
今はそんな単細胞なことぐらいしか思いつかないけれど・・・。
で、建造も、昔ながらの職人技を大切にしながら仕事をしていこうと再認識しました。
時代が変わっても、現場には必ず“手”が要ります。
道具を使いこなし、素材の癖を読み、天候を見極め、仕上がりに責任を持つ
簡単には継げないけれど、失くしてはいけない技術がある。
なんてことをちょっと真面目に考えた次第です。